健康管理システムで健診や特殊健診のデータも一括管理
健康管理システムを導入する目的はいくつかありますが、その中でも中心的な役割を求められているものが健康診断に関する情報の管理です。これは労働安全衛生法に定められた事業者の義務であり、必要なときに速やかに利用できるように管理することが求められます。そのための手段として、データベース化して管理することが有効とされています。
健康診断の結果を管理する必要性について
会社で仕事をしていると、少なくとも1年に1回は健康診断を受診する機会があります。これは福利厚生で行われているというものではなく、事業者が行わなければならない職場の安全衛生にかかわる義務として理解しなければなりません。従って事業者は従業員に対して実施した健康診断の結果を遅滞なく取得し、管理することが求められます。これは労働基準監督署の監査対象にもなるものです。
なお、事業者が求められていることは情報収集だけではなく、健康上の問題がある従業員に対しては適切に対応することが求められています。健康診断の結果が悪かった場合は事業者側が個人に対して病院受診を促すなどの活動が求められています。このような活動にあたっては、健康診断の結果がどのようなものになっているのかについてデータベース化しておくことが有効です。
健康管理システムは、このような労働安全衛生法の要求する内容を実行するために必要な機能を持っているものであると位置づけることができます。健康診断を受けるよう促すだけではなく、結果が悪ければ改善のための行動を起こす必要があります。これらすべてを含めた管理を求めることが法律に書かれている事項です。これを効率的に行うために必要なものとして健康管理システムが評価されています。
特殊健康診断に関して管理する理由
世の中にはさまざまな事業が存在していますが、事業の種類によっては人体に有害な薬品などを使って業務に従事する必要がある場合もあります。そのような業務に従事する場合はすべての人が実施することを求められている定期健康診断のほかに、特殊健診と呼ばれる健康診断を追加で受診する必要があります。その種類は非常に多く、新規での指定も珍しくはありません。
代表的なものとしては有機溶剤を使用する業務に従事している場合に行う健康診断です。これは人体に有害な有機溶剤を取り扱ってきたことによって、身体への影響がないかどうかを確認する目的で実施されています。この特殊健診は定期健康診断とは異なり、それらの薬品などを使用した仕事に従事する場合には半年ごとに実施することが求められます。
また、特殊健診の結果についても適切に管理しなければなりません。人体に有害な薬品などを使って業務を行っているため、万が一健康被害が生じたときには適切に法令に沿って安全に努めてきたことを証明する必要がありますが、この健康管理システムでの管理が、適切な管理を証明することにもつながります。
製造業はさまざまな薬品使用が避けられない場合もありますが、そのような場合も適切に管理をしているということが従業員個人の健康はもちろん、何か問題が生じた際の事業者の立場を守るものになるといえるのです。
健康管理システム導入による職場の安全衛生への影響について
健康管理システムを導入することによって、企業側が従業員の健康管理を適切に行っていることの証明がより容易になります。またこれは労働安全衛生法によってすべての事業者に義務付けられている事項でもあります。そのため適切なタイミングでデータベース化することが必要であるという認識を持つとよいでしょう。
いわゆる健康診断は福利厚生目的で行っているものではなく、労働に起因する体調不良やけがなどを予防したり、すでに生じている不調等に適切に対処したりすることを目的としているものです。そのため結果に関して必要があれば適切に次の手を打てるように促すことが求められています。とくに特殊健診が必要となる化学薬品や化学物質の取り扱いをする業務を行う事業所の場合には、この特殊健診の実施により適切に対処していることを証明し続けることが事業者の責務である、という認識を保つ必要があります。
職場の安全衛生は問題が生じないように働きかけることがまず必要ですが、さらに問題が生じている場合にはそれを速やかに発見し、改善のための手を打つことが重要です。そのために必要な仕組みが法律によって定められているのです。その内容を効率よく実施していくために必要な機能が盛り込まれたシステム、実際にはデータベースなどがいわゆる健康管理システムであるということなのです。
健康管理システムは健康診断や特殊健康診断の結果を管理する上で、非常にメリットのあるものであるといえます。膨大なデータの蓄積に耐えうるデータベースの構築のために必要な環境を整えるのにコストはかかりますが、それに勝るメリットを得ることができるでしょう。