健康管理システムとはどんなもの?仕組みを解説
労働者を雇用している企業にとって従業員の健康管理の重要性はいうまでもありません。サービス残業や過労死の続出など、日本国内の企業では依然として就業環境の改善や、適正な勤怠管理など解決するべき課題は山積しています。残業規制や生産性向上などが目的の働き方改革が官民挙げて傾注される中で、健康管理システムが注目を集めています。
導入することで実現するメリット
健康管理システムとは、健康診断結果や保健指導などの内容やデータを一元管理するために構築されたシステムです。各企業のホストコンピューターにインストールするものや、クラウド型などいくつかのバリエーションがありますが、基本的には同じ機能を持っています。
最近では労働災害の防止のために労働安全衛生法など関連法規の規制も強力となり、使用者にとっては負担が大きくなっていることが事実です。それは従業員にとっても同様で、健康診断を受ける義務は強制されており、結果として企業側は健康診断などを受けさせる義務を負います。従業員が過労死などし、裁判などに発展すると数千万円単位の賠償金につながりかねないので、健康診断受診命令に従わない従業員には退職勧奨されることもあるようです。
さらに労働基準監督署の規制も強くなり、場合によっては労働基準監督官による監査が入ることもあります。事業所の規模に関係なく、従業員の就業環境の改善維持と健康管理は大きな問題と認識されています。しかし従業員の健康管理は多面的で、適正に管理するには人的コストを伴います。
このような企業の人事管理上の負担や手間を効率的にサポートするものが健康管理システムです。メタボ体質など生活習慣の影響が否定できない健康上のリスクも同時に管理することが可能です。健康管理システムを導入することで、メタボ社員を減少させて医療費を削減できるメリットもあります。
健康管理システム導入で利用できる機能
ところで健康管理システムを導入すると、具体的にどのような機能を利用できるのでしょうか。労働者の健康管理は、多岐にわたる分野で利用される情報です。現時点で健康管理システムを導入することで実現できる機能とは、概ね下記の内容に集約できます。
まず人事管理との連携機能です。労働者の健康管理を実際に担うのは人事管理部署です。人事管理では労働者の給与計算や人員配置などの判断に労働時間の的確な把握や適性を分析するため、健康診断などのデータの有用性が高くなります。労働者の健康管理が日常的な労務管理と密接不可分の関係にあることはこのような事情からです。
そこで健康管理システムと人事情報システムとの連携機能を活用することで、より細かく効率的な健康管理を可能にします。もちろん第一次的には健康診断や保健指導などのデータを集約することです。数値結果などをモニタリングし異常値を早期に検知するなど、健康管理に直接寄与することも叶います。
勤怠管理などの人事情報と連携することには、長時間残業などの過重労働を察知できる意味合いもあります。過重労働者を放置することはコンプライアンス上も大きなリスクです。さらに健康管理や労務管理では、労働基準監督署などへ各種の文書を作成することが要求されます。健康管理システムにはデータをもとに各種提出文書を作成する機能も実装されているため、事務手続き上の負担も期待できます。
健康管理システムはいろいろな課題のソリューションになる
長時間労働による過労死が後を絶たないことや、残業の横行による労働生産性の低下などが問題視され、多くの企業は定期健康診断実施や個別の健康相談などを通じて労働者のヘルスマネジメントに取り組んでいます。とはいえ、労働者の健康管理を適切にモニタリングすることは容易ではありません。せっかく定期的な健康診断を実施していても、異常を指摘された社員は医療機関を受診しないでそのまま放置していることがあります。
最終的には深刻な合併症につながるリスクを持った生活習慣病ですが、困ったことに初期段階ではほとんど自覚症状がありません。そのため健診結果で異常を認識できても、わざわざ病院へ精密検査のために足を運ぶ人は少ないことが現状です。これは従来のように企業が単純に検査機関の結果を通告することで完結していたことに起因する欠陥です。
この点、健康管理システムを導入すると人事管理部署でも従業員の健康状態の異常を共有できるため、検査ごとのフォローアップに活用することが叶います。具体的には異常が見つかった項目について該当社員に受診を促すことが可能になります。
さらに健康管理システムの中には生活習慣の記録や、ステップメールなどの配信機能を実装しているタイプも登場しているのです。システム上で従業員の健康リスクマネジメントの動機づけなどにも活用できる可能性を持っていることもメリットです。
企業にとって従業員の健康管理は、労務管理上もコンプライアンス上も解決すべき大きな課題です。従業員それぞれの体調を詳細まで管理するものが健康管理システムです。健診結果の一元的管理だけではなく、病気の早期発見や行政庁への提出文書作成など、より効率的な労務管理や健康管理を実現します。